吾郎の語録

トラベルガイド株式会社社長の阿部吾郎が、思いつくまま勝手なことを述べるブログです。できるだけためになる事を書こうと思いますが、どうでもいいこともたくさん書きますので適当にお付き合いください。

ついに「てるみくらぶ」が倒産

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旅行業界では、だいぶ前からてるみくらぶは危ないという、うわさはありました。どう考えても採算の取れないような価格でツアーを売りまくっていたので、自転車操業に陥って目先の資金を確保するのが目的ではないかとの憶測を呼んでいました。しかし、とにかく大量に送客する力があったので、一部の航空会社やランドオペレーター(現地の手配会社)は、てるみくらぶにすり寄っていました。

航空券の発券システムに問題があり発券業務に支障がでていると昨日報道がでましたが、旅行業界の人間は「BSPが飛んだな」とすぐにピンときたことでしょう。旅行会社が航空券を発券するとBSP(Billing and Settlement Plan) といって、個別の航空会社に代金を納入するのではなく、決済銀行に月4回のタームでまとめて代金を支払う仕組みになっています。この支払いが1度でも期日までに行われないと、発見停止処分が科されて発券業務が滞ります。航空券を発券する旅行会社にとって、BSPの支払いが滞ることは、即倒産につながります。てるみくらぶは、ついに資金がまわらなくなってBSPへの支払いが滞ったということです。

現地でホテルがキャンセルされていたとこか、空港への迎えが来なかったという報道もありますが、おそらくランドオペレーターやホテルへの支払いも滞り始めていたのでしょう。

負債総額は151億円と報道されていますが、旅行へ行けなかった顧客への返金分に加え、航空会社、ランドオペレーター、広告媒体に対しての負債が多くを占めていると思われます。もちろん、社員への未払い給与もあるでしょう。負債額は精査すればさらに増えるのではないでしょうか。

旅行会社は旅行業協会に供託金を預けており、これをベースに顧客への弁済が行われますが、今回の場合限度額は1億2千万円ほどですから、とうてい足りません。あとは、会社を清算して残ったお金から支払われる可能性もありますが、未払い給与が最優先となり、顧客への返済までは回らない可能性が大きいでしょう。残念ながら、多くのお客様が被害を被ることは避けられないのではないでしょうか。

現地でホテルにチェックイン、もしくはチェックアウトする際に、てるみくらぶから支払いがされていないということでお客様にホテル側が代金を請求するケースも、ネットを見ていると多く発生しているようです。旅行業法上、旅行会社は顧客の代理として、顧客と宿泊施設の契約を締結するということになっており、あくまでも契約自体は、顧客と宿泊施設との間の契約であるため、仕方がない部分もあると思いますが、ひどい話です。

今回の倒産は、てるみくらぶ自体の経営手法に大きな問題があったと思いますが、格安航空会社やホテル予約サイトの台頭により、航空券とホテルと送迎だけの、いわゆるスケルトンタイプの格安ツアーが売れなくなってきているという、旅行業界の大きな動きも関係していると思われます。